仕事を読む

見て盗めはなぜ愛されたのか

仕事は見て盗め。

自分で考えてやらないと仕事は覚えられない。

時は遡ること昭和時代。

当時のサラリーマンや技術職の多くはそうやって仕事を教わる、、、否、盗んできたことでしょう。

今でもその考え方は脈々と受け継がれ、現在も多くの企業や人が採用しています。

もちろん、今でも仕事を見て盗んだり、自分で考えたりする事は大事です。

しかし、時代は変わりました。

例えば、一流の寿司職人になろうとすれば何年もの辛い修行に耐えてようやくその技術が身につくものとされてきました。

ところが、今や寿司屋の専門学校で3ヶ月学んだだけでミシュランの雑誌に掲載される様なお店が出始めているのです。

もちろん、その店は例外的な話かもしれません。店主に人並ならぬ才能や努力があったのかもしれません。

また、時には立ち止まり、手取り足取り教わるのではなく、見て盗んだり自分で考える事は大切でしょう。

しかしながら専門学校を出てたった1年で雑誌に掲載されると言うことは、苦しい下積みや修行、見て盗めといった考え方が無駄であったということの表れではないでしょうか。

さて、今夜は昭和時代の代名詞である「見て盗め」。これを考察していきます。

見て盗むことは良いのか

ここでは見て盗む事で得られることを

仕事を覚える事と定義するとします。

それをもっと単純化するなら見て盗む事で何かを記憶できるという事にします。

では見て盗む事の最大の利点は何でしょうか。

それは一回で覚えられると言うことです。

一方で人から教わるとなかなか覚えられません。

上司に「何回も同じこと言わせるな」と言われた人も多いのではないでしょうか。

人から教わるとなかなか覚えられない。

だから見て盗んで悩んで考え抜いた事しか身に付かない。

上の世代の人たちはいいます。

しかし、本当にそれが最善の方法なのでしょうか。

感動すると記憶できる

まず、なぜ自分で見て盗むと身につくのか

そのカラクリを考察してみます。

結論から言うと、感動体験を生むからではないでしょうか。

人間は何か感情を伴って得た記憶というのはとても頭に残りやすい。

必死になってやり遂げた仕事が上手く行った時の達成感、

大好きだった異性と付き合えたときの嬉しさ

とんでとない失敗をしたときの恥ずかしさ

一方で同じ出来事でも感情を伴わないとすぐに忘れてしまいます。

簡単にできてしまう様な仕事ができた時

一夜限りの関係となった異性

特に気にも留めていない失敗など

人間の記憶、特に短期記憶を司る場所は海馬と呼ばれる場所だという事は多くの人が知っていると思います。

その海馬の近くには感情を司る扁桃体と呼ばれる場所があります。

2つは割と密接な関係があるため、感情を伴った記憶というのは頭に残りやすいのです。

回数を重ねると記憶できる

一方で人間が何かを記憶に残す方法の中で有名なのがひたすら回数を積み重ねる事です。

例えば最近になって思ったのが500匹近くいたポケモン(当時の数)の全てを覚えきっていた事です。

当時は確かに面白いという感情もあったでしょうが、やはり圧倒的に数をこなしていたと思います。

一方で大人になってから最新のポケモンをやってみても一向に種類が覚えられない。

やはり数が足りなかったのでしょう。

また、例えば大学の頃の学籍番号は全部で10桁くらいありました。

352447150みたいなただの数字の羅列でしたが今でも寸分の狂いなく暗唱できます。

それは毎日毎日、パソコンにログインする時に使いまくったからでしょう。

つまり記憶に必要なのは圧倒的な量であるという事です。

人から教わると覚えられない真相

さて、なぜ見て盗むと身につき、人から教えられるとなかなか身に付かないのかその真相が見えてきたでしょうか。

普通に考えれば人に教わる方が遥かに早いはず。なぜなら自分で試行錯誤するという事はその分無駄が多いと言うことです。

しかし教わるとなかなか身に付かないから無駄を出しながらでも見て盗む方が良いとされてきました。

ところが、私が考えるにどう考えても教えてもらった方が早い。

答えのないものならまだしも、ある程度基礎的なところまでは絶対に教えもらう方が良い。

ではなぜ人から教わる方法は身に付かなかったのか。

それは単純に量が足りなさ過ぎたのです。

社会人が最初に上司や先輩に教わる時、

同じ事を教わる事が極端に少ない。

なぜなら「何回も同じこと言わせるなよ」と言われてしまうから。

人は同じ事を言うのが好きではありません。

脳が飽きてしまうから。

後輩や部下が何回も何回も注意しても同じミスを繰り返していたら腹が立つでしょう。

しかしそれではそもそも回数が足りないのです。

1回や2回で覚えられる人はかなり優秀だと思います。

普通はもっとかかるんです。

少なくとも10回は同じ事を言うくらいの気持ちの方が良い。

皆さんは中学の時、interestingという単語を覚えたと思います。なんの苦労もせずに。

ところが高校になってwithstandという単語を覚えている人がどれだけいるでしょうか。

一部の高学歴な方や英語が得意な方を除いて殆ど覚えている人はいないんじゃないでしょうか。

これもやっぱり回数の違いです。

中学の頃はinterestingという単語は授業でもテストでも模試でも何回も何回も出てくるんですね。

一方でwithstandなんて一回習ったら次に出てくるのは入試本番のみなんてこともあったわけです。

このように回数さえ重ねれば嫌でも覚えてくるものなのです。

もちろん、前述の通り全てを教えてもらうのは違うのかもしれません。

時には自分の頭でじっくり考える事も必要でしょう。

ところが、多くの会社では明らかに答えが出ているもの、手順さえ踏めば誰だって出来る事さえ見て盗めになってしまっている様な気がします。

大事なのは、基礎的なところ、よくある事例などは自分で考えずに教えてもらった方が早い。そして教えてもらった事で空いた時間をより頭の使う事に割いた方が良いと思います。

まとめ

時には見て盗むという試行錯誤も大事です。

しかし指導者はそれを基本的な指導方法にするのではなく、本当に必要な時にだけ適用できると良いのかもしれません。